STORY あらすじ
ドキュメンタリー映画『きみがいるだけで』は、脳性麻痺や急性脳症など、重い神経障害を抱えた子どもたちと、その家族、そして一人の医師の歩みを静かに追った記録である。
その中心にいるのは、医療の最前線で奮闘する医師・平林大輔。彼が取り組むのは、細胞から分泌される微細な物質「エクソソーム」を用いた治療。小さなカプセルの中には、マイクロRNAや成長因子、タンパク質といった「生命のメッセージ」が詰まっており、それが体内で眠る再生のスイッチをそっと押す。
映画は、数人の子どもたちの姿を通して、その治療の現場を見つめていく。2歳のときに急性脳症を発症し、医師から「寝たきりになる可能性が高い」と告げられたタイガくん。家族は絶望の淵に立たされながらも、平林医師のもとでエクソソーム治療を始めた。2年半が経った今、彼は自らの足で立ち、歩こうとする。
同じように、ナオトくん、トモアキくん、ミウアちゃん、オウタくん、ハルキくん、モトハくん―それぞれの小さな奇跡が、カメラの前で淡々と、確かに積み重ねられていく。
しかしこの映画は単なる「治療の成功物語」ではない。エクソソーム治療はまだエビデンス(科学的根拠)が確立されておらず、将来的な副作用やリスクへの不安も残る。医療費も決して安くない。それでも平林医師は言う。
「本当に新しいものなので、今はわからないことも多い。でも、目の前で困っている人がいる。助けられる手段があるなら、やらない理由はないんです。」
不安と可能性の狭間で揺れながらも、ただ「目の前のいのち」に向き合い続ける。家族の苦悶と笑顔、諦めと信じる気持ち。その狭間の中で、点滴や注射を忍ばせたキャスターケースを転がしながら孤立奮闘する1人の医師。その姿は、「生命の力を信じる医療」の原点を思い出させてくれる。
映画の終盤、ハルキくんの父親はカメラに向かってぽつりと語る。「パパと呼ばれたい」。『きみがいるだけで』は、最先端を通して垣間見る、医師と家族の苦しく美しい抒情詩だ。











